1Pair for 1Person Vol.3 森の再生が現地の方との交流にもなって、NSGT(なんてステキなゴム手袋)!

社団法人日本マレーシア協会の新井 卓治様にお話を伺います。

社団法人日本マレーシア協会 専務理事 新井 卓治様 プロフィール

社団法人日本マレーシア協会とは?

植林活動をはじめ、親善使節団の派遣、各種講習会の開催、在日マレーシア人留学生の相談活動、日本からマレーシアへの修学旅行や研修など各種交流活動のコーディネイター的な役割で、日本・マレーシア交流の窓口としてご活躍されています。ご自身もマレー語を習得され、語学本を2冊も執筆されるほどの熱意。

社)日本マレーシア協会は日本と密接なつながりのあるマレーシアとの友好的な交流を目的として、昭和31年の発足以来、「熱帯雨林再生活動」、「留学生援護活動」、「親善交流活動」、「調査研究活動」、「広報啓発活動」などの様々な活動を行っている、外務省認可の公益法人です。特に植林については、環境保全と地球温暖化防止を目的に、ボルネオ島・サラワク州にて、植生を研究しながら行っています。

【公益社団法人日本マレーシア協会】
http://www.jma-wawasan.com/

Q1マレーシアはどんな国ですか?

新井さん:
ゴムちゃんも高校生の時に海外修学旅行で行かれたとお聞きしましたが、最近では、修学旅行の渡航先として上位に挙がってきている国です。マレーシアは英語も使うし、多民族国家でもありますから、学習にも役立つ場として、近隣のアジア地域の中で、行きやすい国の1つのようです。
そして、実は日本とは深い関係があるんです。例えば、ゴム手袋もそうですが、日本の工業製品がたくさん作られています。家電製品に関わる電子・電気の製作基地があり、また、日本へも輸出の多い錫(すず)・ゴム・天然ガス(LNG)などの天然資源があるのも特徴です。食品や日用品の原料になっている「パーム油(植物性油脂)」の一大生産地でもあります。
意外と日本人の生活に密接に結びついていることが多いですね。日本の会社の工場などもあり、マレーシアに住んでいる日本人も多いんですよ。

ゴムちゃん:
私が毎日聞いているポータブルプレーヤーの後ろをパッと見ると、「made in マレーシア」って書いてありました。

新井さん:
日本の工場があるのは、国情が安定しているのも一つの原因かな、と。また、気候も一年を通じて一定で温暖で穏やかです。台風や地震もあまりない安定した国なので、東南アジアの中でも、日本の産業や観光をになう、大切な友好国の中の1つと思っていただければいいですね。

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Q2私も参加した植樹について、一緒に、皆さんへご紹介しましょう。



まだまだ背は低いけどこれからどんどん大きくなるんだって!

「1PAIR for 1LOVE」では、私たちのゴム手袋工場があり、20年以上も前からつながりの深いマレーシアの地で、社)日本マレーシア協会・現地の皆様のご協力の下、ボルネオ島の「ダンロップホームプロダクツの森」での植樹活動を行っています。
この森では、工場で排出するCO2のカーボンオフセットを目指すとともに、乱れた生態系を取り戻す地球環境保護のため、オランウータンの生育地となる原生林に近い環境作りを進めています。

新井さん:
「ダンロップホームプロダクツの森」として植林しているのは、ボルネオ島サラワク州の「クチン」という町から車で1時間ほどのところです。

ゴムちゃん:
私は4月に行きましたが、植林をする時期ってありますか?

新井さん:
一年を通してできますが、日本の冬に当たる12月~2月の雨季が終わってから、草刈りなどのメンテナンスをして植樹します。ゴムちゃんと4月に植えた樹も、半年経った10月の半ばごろにメンテナンスします。半年ですが、少し背も伸びてるんですよ。私もそれを楽しみにしています。

ゴムちゃん:
ちょっとは、太くなったりしてるんですかね?

新井さん:
新芽が出て、どんどん上に伸びていますから、あの頃より高くなっていると思います。 熱帯とはいえ、成長のスピードはゆっくりなので、成木になるには40~50年かかりますし、「大きくなったなぁ」と思うまでには3年ほどかかりますね。それまでは、割と徐々に大きくなる感じです。

ゴムちゃん:
今後のこの森の役割はどうなりますか?

新井さん:
もともと、熱帯雨林というのは、40~50mくらいの背の高い樹があって、下のほうに背の低い樹や草などが茂っているという感じです。以前は、背の高い樹を伐採して、主に建築用資材などとしてたくさん輸出されていました。その跡を、背の低い樹(雑木)が覆い、元あった様子ではない森になってしまったのが、最近までの姿です。それをそのまま放置しておいても、何百年もかけないと使える森にならない。従来の農業ができなくなったり、土砂が河川に流れ込んでしまったり、環境への影響が出てきてしまいます。

そこで、元々そこに生えていた在来種を「母樹」(=森の主役となる樹)として植えて育てることで、森の様子を変えるのです。この森は、雨の量もちょうどよく、気候も穏やかで土壌もよいので、しっかり育ちますよ。また、地域の人たちに依頼して、草刈りなどの作業をしていただくことで、継続して育ててもらったり、見守ってもらったりしています。普段慣れていない僕らが行っても役に立たないというか・・・(笑)

ゴムちゃん:
ほんと、そうでした。5つくらいしかお手伝いしなかったのに、1つでとっても時間がかかったし、ほとんどを現地の方に助けてもらいました。13人の方で、800本植えたと聞いてびっくりです!

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Q3今後、この森は現地の皆さんにとっても、よい存在になるでしょうか?

マレーシアで植樹をお手伝い頂いている現地の方々です。とってもスムーズに作業をこなされます!

新井さん:
お手伝いいただいている方々は、その地域で森と一緒に暮らしてきた方なので、森のことをよく知っています。木になる食べられる果物を、なたのような刀でさっと狩ったり。森の生活というのは<文化>なので、今でも欠かせないものがあるようです。植樹の作業も得意でとてもスムーズにされますね。

ゴムちゃん:
実際にやってみて、皆さんが準備してくれていたことに感謝できたり、文化の背景も分かって、良かったです。つらかったですけど、またやりたいです!

新井さん:
今は、森の主役になる樹を植えることを優先していますが、将来的には、それらが育ってできた森を複合的に活用し、生活に必要な農作物・果物を育て、生活の一部になるようになればと思います。
植樹は、地域の人たちにとって、「環境保護だから」という以上に、自分たちが植えた樹が成長していく姿や、昔あった森でできたことがまたできる喜びを感じてくださっているようです。
ですので、「森を育てるプロジェクト」として、資金や期間で終了するのではなく、植えた森を活用し、現地の生活に取り入れられて上手に残していくことを考えて、村の人たちと話をしたり、周囲の農業の現状を知りながら進めていくことが必要だと感じています。 樹もゆっくり育ちますが、地域の人々とのコミュニケーションも時間を重ねてゆっくり育っていくものなのかなと思います。森の再生も実感してもらえるようになればいいですね。

ゴムちゃん:
ネクストステップですね。

新井さん:
ゴムの樹だって、森の合間にちょこっと植えて、樹液を採取している、ということもありますしね。森が育つと色んなことができますよ。

ゴムちゃん:
それって、元々の原生林と共存できるものなんですか?

新井さん:
共存できると思います。そこでの作物は、大規模なものではないので、決して「生産性がいい」わけではないですが、家の裏庭でちょっとしたものを育てているという感覚です。

ゴムちゃん:
それだったら、森を「作る」だけでなく、「活用して」身近な森として育てていくことができますね。そうやって、交流も生まれて、またさらに、次の段階にも進んでいきますよね。

新井さん:
また、この森を保護区として、産業の仕組みとは分けて残していくことは「植えたところだから守る」以外にも価値があります。実は、農業用に開発されたところは、養分のある土壌が流れてしまい、そこで以前のような樹を育てるのは容易ではありません。ですが、雑木があるところは根が土を支えていて土壌的には、昔の熱帯雨林を取り戻しやすい条件が残っています。そこで植樹をして森を作ることは、地域の人たちにとっては、元の森を活用した暮らしができることにつながり、将来的に暮らしに役立つと確信しています。

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Q4「1PAIR for 1LOVE」についてお聞きします。


※写真は「樹から生まれた手袋」旧パッケージです。

ゴムちゃん:
私たちの「樹から生まれた手袋」は、購入していただくことを通じて、植林を支援し、現地の人々の支援・交流につながる商品ですが。

新井さん:
買うことで支援できるのであれば、優先的に手に取ろうという気持ちになるかなと思います。自然の材料は、石油などの化石燃料と違い、再生産できるものなので、ある程度大切にしながらもずっと使っていけるものですから。
天然ゴムは、樹から生まれますが、気づかれにくいので、パッケージで伝えてくれるといいですね。「自然に還る」ということが分かると、より気持ちが動きます。改めて、天然ゴムからできたものが、身近にもあるんだなと気づきました。
樹から生まれたもので樹を再生して、森が増え、野生動物や農地が増えて、生物多様性が取り戻せると知れば、単一のもので囲まれてすさんできた人の心も、多様性を受け入れて、より穏やかに過ごせるようになるのではないかなと思います。
また、みんなが現地に行けるわけではないので、商品を買って協力できるというのは、なかなかいいなって思います。天然ゴムは、これからも、熱帯の植物の1つとして、森の一部を使って共生でき、循環できるいいものだと思います。

ゴムちゃん:
今後、マレーシアの森を通じて、どのようなことを考えていますか?

新井さん:
お互いのことをもっとよく理解できるように、特に、人の交流が進めばいいなと思います。マレーシアでしか見られない自然というのもたくさんあります。ボルネオ島などは、日本からも近くて熱帯雨林の自然がしっかり残っているところです。
見に出かけるっていうことでも、環境保護について考えるきっかけになると思いますので、実際に足を運んでもらうことも、これからもっと必要かな、と考えています。

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私も実際に森作りを少しお手伝いしたので、この森も将来的には、ゴムの樹と一緒に共生できると聞いて、とてもうれしいです。みなさんの協力が循環するように役立てていきます。次にマレーシアを訪れる時には、植えた樹が大きくなっているのが楽しみです!